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連続日記小説「午後の紳士」004
2004/07/30(Fri) 00:00:00
夏バテ気味だ。
食欲はある。体調も悪くない。
しかし、何かがおかしい。
夏バテという言葉で片付けていいのだろうか。
引越しして気分を一新し、一から出直す決心をした。
この不思議な街のあらゆる物事に新鮮さを感じた。
色々な人たちと接し、大きな活力をもらった。
新たなスタートとしては申し分ない状態だ。
しかし、何かがおかしい。
この、不安定な感覚の理由を、幾日も考えた。
何かがおかしい。
・・・何かが足りない?
この街には・・・
自由がある。
心のゆとりがある。
誰もが充実している。
それゆえに、紳士を求める環境が極端に少ないのである。
子供たちが遊んでいる。
大きな声を出したり、動き回ったりしながら。
誰の反感も買わずに、誰をも否定せずに。
老人が歩いている。
時折、好きな場所で休憩をとりながら。
誰の邪魔もせずに、誰にも邪魔されずに。
あらゆる行動が、
この街に良い影響を与え、この街から良い影響を受ける。
そして特に行動しなくても、
悪い影響は生まれない。
私は紳士のあり方を考え直さなければならない結論に至った。
求められて与えるものではない。
求めさせて押し付けるものでもない。
ただ紳士でいればよい。
私の中で明らかに精神的な革命が起こった。
何をしても良い。何もしなくても良い。
ただ紳士でいればよい。
ただ紳士でいながら、冷蔵庫を開けてみた。
ただ紳士でいながら、梅干を3つ同時に食べてみた。
ただ紳士でいながら、しわくちゃな顔でもがいた。
ただ紳士でいながら、足の小指をテーブルにぶつけた。
ただ紳士でいながら、痛くないふりをした。
ただ紳士でいながら、絶えられなくて少し内股になった。
重度なバカを実践したが、まだ私は紳士だ。
究極の紳士を目指す、精神的な土台が出来た気がした。
連続日記小説「午後の紳士」003
2004/07/21(Wed) 00:00:00
すがすがしい気分だ。
こんな気分は幾日ぶりだろうか。
引っ越したばかりの私の、みごとなまでに粗末な部屋に、
何人かのひとが尋ねてくれ、メッセージまで残してくれた。
街の探索を兼ねて、訪問のお礼に出かけた。
外は蒸し暑く、徒歩での探索で汗だくになったが、
苦にはならなかった。
可愛いお子さんのいる部屋や、
海の写真をたくさん飾った部屋、
素敵な部屋がたくさんあった。
カフェで話し相手を待つが、いつもタイミングが悪い人、
歯医者では、悪のりした女の子が警官にしかられていた。
海辺の像には、安らぎと感動を憶え、
私も年甲斐も無く恋の詩を刻んでしまった。
帰り際、酒場で一杯だけ酒を飲めば、
歩き疲れさえも、忘れてしまう気分である。
上機嫌で部屋に戻ると、
さらに新しい訪問者が来ているようだった。
なんて素晴らしい街なんだ。
人と人との繋がりが、こんなにも自然に湧き上がり、
そして何の隔たりも無くこだましてゆく。
新たな感動を噛みしめながら、
急いでその新しい一通のメッセージを手に取ってみた。
パトロール中の巡査部長であった。
・・・お仕事ごくろうさまです。
連続日記小説「午後の紳士」002
2004/07/20(Tue) 00:00:00
不思議な街だ。
市民登録すると何故かTシャツを支給された。
単なる粗品かと思いきや、それを着て生活する事を誰しもが強要されているようだ。
腑に落ちない気もしたが、今の私には衣類を購入する資金も惜しいところである。
とりあえずはこの街のしきたりにならう事にした。
そんなことより、まずは職を探さねばならない。
職業案内所に行ったが、紳士的にこなせそうな仕事が見つからない。
この私が巫女の仕事に紳士的に従事する姿を30分間想像してみたが、
まったくイメージがわかなかった。
気晴らしに、この街でできる遊びを探すことにした。
紳士たる者、遊びを知っている事も必要である。
ボーリング場を見つけた。
前に住んでいた「あの街」となんら変わりないボーリング場。
しかし、1ゲーム終えて驚くべき事が起こった。
ゲームの点数と同じだけの賞金をくれるというのだ。
普通にプレイすれば、支払ったゲーム代の何倍にもなる。
ボーリング場の近くにカジノがあった。
スロットマシンで少し儲かった。
調子に乗って、ブラックジャック、ルーレットを試した。
こてんぱんに負けた。
しかし、他の遊びを色々試して、なんとか資金を増やすことができた。
ボーリング同様、ゲーム代以上の賞金がでる物が多い。
遊び漬けになって、本当にこの街で紳士で居続けられるか不安になってきた。
稼いだ資金で、実家から「そうめん」を取り寄せた。
引越しそばの替わりである。
少しでも紳士の気持ちを取り戻そうと、ご近所に挨拶に行く事にした。
周辺の部屋は、全て留守であった。
しかし驚くべきことに、皆ドアに鍵をしないまま外出している。
挨拶のメモと引越しそうめんを置いておく事にした。
しかし困った事に、うまく絵文字でそうめんが描けない。
うまく伝わるか心配だが、諦めて普通に言葉だけで書くことにした。
紳士に絵文字は必要ない。
たぶん。
連続日記小説「午後の紳士」開始!
2004/07/18(Sun) 00:00:00
何も考えず、この世界に来ましたが、
なぜか「究極の紳士を目指す!」という目標を
これまた何も考えず設定してしまいました。
この世界で何ができるかも知らないので、
とりあえず、日記の中で紳士の日常を語ります。
※日記といっても毎日は無理。週1もやばいかな?
あくまで、この世界の日常であり、全ては
架空(妄想?)の物語です。
それでは、たった今より、紳士になりきります。
[連続日記小説「午後の紳士」001]
職を失った。
紳士としての1つのステータスを
一瞬にして失ってしまった。
こうなってしまっては、究極の紳士たちが競い合う「あの街」で生活する余裕も無い。
職を失い、住居を失った。
しかし全てを失ったわけではない。
間違えやすいのだが、紳士とビジネスマンとは、
似て非なるものである。
職が安定していても紳士と呼べる者は少ない。
紳士として重要なステータスはいくつもある。
生活面、肉体面、精神面・・・
その中のいくつかのステータスが
低下しただけである。
もっとも、今回私が失ったものの中で、
一番悔やまれるのは「タキシード」だ。
紳士は常にタキシードを着こなすべきである。
私は残り少ない資金で新たな街へ越し、
究極の紳士を目指す活動を1からやり直す事にした。
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